視覚に頼らず、触ることで商品情報へのアクセスを可能にするしくみ ココヨム
視覚障がい者の方々とともに開発、社会インフラ化目指し導入開始
2026.08.26
「商品パッケージを手に取ったとき、どのような方がどんなことに困っているのだろう――」
そんな問いから、ロッテ中央研究所 研究情報戦略部 パッケージ研究課のインクルーシブデザインチームは、調査を開始しました。まず着目したのは、視覚障がい者の方々です。当事者へのヒアリングを通じて見えてきたのは、知りたい商品情報がパッケージ上のどこに書かれているのかがわからない、という課題でした。
研究員らは多数の当事者のご協力を得て解決策を探り続け、箱を触ることで商品名や賞味期限などの情報がどこに表示されているかを把握できるしくみを開発しました。その位置にスマートフォンのカメラをかざすことで、音声読み上げアプリ等を介して情報を得ることができます。
「ココヨム」と名付けたこのしくみをロッテは広く公開し、国内外の多くの企業・組織に取り入れていただくことを目指しています。
このプロジェクトは2年前、視覚障がい者の方々へのヒアリング調査からスタートしました。障がい者の視点を活かしたコンサルティングを手掛ける「ミライロ」(大阪市)と連携してお話を伺った結果、情報取得手段は点字よりもスマホアプリが主流であること、似たような箱に入った商品が多いため区別がつきにくいこと、知りたい情報がパッケージのどこに記載されているかわかりにくいことなどが、明らかになりました。研究員自身も視覚障がい者の方の見え方を体験できるゴーグルなどをしてロッテ製品のパッケージに触れてみたところ、どんな商品なのかもどこに開け口があるのかもわからず、安心して召し上がっていただくために早急な対応が必要だと痛感しました。
その方針に沿って、点字のようなドットで囲んだり、四角い溝にしたり、二重の四角で囲ったり、面でエンボスやデボスにしたり、加工形状や罫線太さを変えたものなどを十数パターンほど試作し、研究所内で官能評価したり当事者の方々に手に取っていただいたりするとともに、包材メーカーで加工しやすい仕様を模索しました。本村さんは「ロッテ製品だけでなく、多くの商品に導入していただけるものにしたいという思いがあったので、包装資材の種類や加工技術・設備に左右されにくく、コストがかからない規格を目指しました」と、当時を振り返ります。
その結果、狭いスペースでも加工可能で、当事者の方から「触ってわかりやすい」と評価が高かった太さ1.4mmの四角形の罫線を採用することに決まりました。また、商品名、賞味期限、アレルギー表示に加え、「アルコールが入っているかどうかも知りたい」という当事者の方からの要望を受け、アルコールに関する表記も同じ面に入れることにしました。これだけの情報をどうコンパクトに収めるかが、次の課題です。
マーケティング、デザイナー、工場、品質表示など、パッケージの制作にはさまざまな部門が関わっています。印刷できる面積に制約があるなかで、商品の魅力を伝えることとスマホアプリでの読み取りやすさを両立させる必要があり、安定して生産できることも重要です。関係部署に丁寧に説明を繰り返し、何度もテストを重ねました。「その過程で、この取り組みに対する社内の理解が広がっていくのを感じ、何としてでも形にしたいと強く思いました」。他社でも前例のない試みに挑戦する本村さんらを、ロッテグループの仲間が支えました。
ようやく完成したしくみの名称は「ココヨム」と決定。「ここを読む」という意味を込めました。四角い囲みにスマホをかざして読み取りアプリを起動した際、「ココヨム」から読み始め「ココマデ」で読み終わるよう、アプリに認識されやすい字体で作った「ココヨム」「ココマデ」ロゴもできあがりました。
開発に協力くださった視覚障がい者の方々30名にさっそく「ココヨム」を試してもらったところ、「すべての商品に採用してほしい」「あちこちの面にスマホをかざすことなく、使い慣れたアプリですぐに読み取れて感動した」と、全員から「便利だ」という評価をいただくことができました。
また「ココヨム」は、加齢により視力が落ちてきて拡大鏡や老眼鏡を必要とする方や弱視の方、ディスレクシア(読字障がい)の方にも活用いただけるだけでなく、必要な情報が一カ所にまとまっていることで、すべての方に便利なしくみでもあります。視覚障がい者の方々の困りごとに着目してスタートしましたが、結果としてさまざまな人に喜んでいただけるものができました。