ブランド価値を高め、グローバルに成長を
ロッテホールディングス社長 玉塚 元一が描くロッテグループの未来
2026.03.24
ロッテグループは現在、日本と韓国に経営基盤を持ち、世界約35の国と地域で活動しています。しかし、両国とも国内市場の成熟という課題を抱えており、さらなる成長を遂げるためには、日韓グループのシナジーによりグローバル市場におけるプレゼンスをより強固なものに引き上げることが不可欠です。私は社長に就任した翌年の2022年から「ONE LOTTE」という戦略を掲げ、韓国はもちろん世界各地の拠点やお取引先さまへ直接足を運び、連携強化を進めてきました。
私自身、「グローバルに活躍するビジネスパーソンになる」というのが学生時代からの目標でした。新卒で入社した旭硝子(現AGC)でのシンガポール駐在を皮切りに、米国大学院への留学を経て、ファーストリテイリングをはじめとするいくつかの企業で国際ビジネスの最前線に身を置いてきました。そのなかでボーダレスな競争を肌で感じるとともに、企業経営のおもしろさを実感しました。
ロッテとの出会いは、経営支援を手がけるリヴァンプを起業したことがきっかけでした。設立2年目の2006年にロッテリアの経営再建に携わったのですが、当時、リヴァンプに声をかけてくれたのが、現ロッテホールディングス代表取締役会長の重光 昭夫だったのです(*)。こうした縁がつながり、2021年からロッテホールディングスを率いることになりました。日韓にこれほど強固な地盤を持つ企業は他にありません。このユニークな経営基盤を活かし、次のステージへ引き上げる。2021年にロッテホールディングスを率いることになった際、その挑戦の大きさに非常にやりがいと使命を感じたのを覚えています。
*注:ロッテリアは2023年にゼンショーホールディングスに売却
社長就任以来、私はロッテを「外の目」と「内の目」の両面から分析してきました。最大の強みは、なんといっても揺るぎないブランドの知名度と信頼感です。日本での菓子総合メーカー「お口の恋人ロッテ」として、また、プロ野球球団「千葉ロッテマリーンズ」の運営会社としての認知はもちろん、韓国では大手財閥の一つとして、食品のみならず、流通、ホテル、化学、インフラなど幅広く事業を展開しています。従業員のスキルも高く、特に「これをやろう」と決めた時の突進力、現場の実行力には目を見張るものがあります。
一方で、長年日韓で独立した経営を続けてきた結果、グローバルカンパニーとしての独自性を活かしきれず、投資や展開において非効率が生じていたのも事実です。例えば食品事業においても、進出先の国によって日本と韓国でエリアを分けるといった状況がありました。
私の役割は、この「分断」を解消し、日韓の事業シーズを自在に掛け合わせることで、次世代を担う成長ポートフォリオを再構築することにあります。組織の壁を壊すことで生まれる余力を、未来への戦略的投資へと振り向けていく。それこそが変革の本質なのです。
「ロッテがお菓子以外の事業を?」と驚かれる方もいるかもしれません。しかし、私たちの挑戦には確かな一貫性があります。ロッテの歩みは1948年、東京でチューインガムを製造・販売することから始まりました。私たちは祖業であるガムを通じて「噛むこと」の効用を長年追求し、また、ロッテ財団を通じて延べ450名以上の研究者を助成するなど、健康を支える科学的基盤を築いてきました。一方で韓国では、当時の社会情勢や政府の要請もあり、流通、ホテル、化学、インフラなど、ダイナミックな事業の多角化が進みました。これら日韓それぞれが持つ多様な事業シーズを掛け合わせ、新しい事業を創造するのが、私が推進している「ONE LOTTE」の姿です。
象徴的な事例として、日韓ロッテの連携により2022年に設立した「ロッテバイオロジクス」があります。米国のバイオ医薬品製造拠点を買収し、グローバルなCDMO(医薬品開発製造受託)事業へ本格参入しました。さらに2024年にはヘルスケア・バイオ特化型のCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)を新設。世界のスタートアップが持つ革新技術と、グループの製造支援能力を掛け合わせ、新しい価値の創造を目指しています。
さらに、2025年9月、日韓共同で新会社「LOTTE HOTELS JAPAN」を設立し、韓国が先んじているホテル事業を、日本でも本格展開していくことを発表しました。日韓ともに力を入れているコンテンツIP事業においても、日本発、韓国発の人気キャラクターの相互乗り入れを図り、ビジネスとしての相乗効果に加え、文化交流にも寄与することを目指しています。
「お菓子のロッテ」が提供してきたワクワクする体験や安心感を、これからは健康やライフスタイルといった、より広い領域で提供していく。これが私たちの描く変革の形です。