口の健康から社会課題の解決へ

ロッテグループが産学連携でリードする、
地域×口腔ケアのニューモデル

口の健康が、からだ全体の健康も左右する――。今、そんな認識が徐々に広まっています。「オーラルフレイル」と呼ばれる口腔機能の衰えが、先々の介護や死亡リスクにまでつながることが研究で明らかになってきたからです。ガムを祖業とし、ヘルスケア領域へも事業を広げる株式会社ロッテホールディングスの玉塚元一社長と、ロッテ財団の支援を受けてオーラルフレイル予防のための地域モデルづくりに取り組む東京大学未来ビジョン研究センター・高齢社会総合研究機構の田中友規特任講師に、口の健康を起点にした社会課題への向き合い方と、ロッテのこれからの取り組みについて伺いました。

対談の様子はこちらから

メインビジュアル

オーラルフレイル(口の衰え)が、死亡リスクに

プロフィール画像1

田中 友規氏

東京大学 未来ビジョン研究センター 高齢社会総合研究機構

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。地域在住高齢者におけるオーラルフレイルの進行機序解明と早期介入、住民主体のヘルスプロモーション法の開発・推進に取り組む。2024年、「ロッテ重光学術賞」受賞。

玉塚:ロッテは1948年の創業以来、ガムを祖業として歩んできました。当初は嗜好品だったガムですが、今では歯や、歯ぐきに対する機能を持つ製品が売上構成においても伸びてきています。実際、私も多くの研究者の皆さまと対話を重ねる中で、口の健康こそが全身の健康への入り口であると実感しました。だからこそ、田中先生のような研究者の皆さまと共同研究を行い、グループ全体で「お口の健康」にコミットしていきたいと考えています。

田中:私が取り組む「オーラルフレイルを軸とした課題解決型実証研究」に対して、多大なご助成をいただき感謝申し上げます。「オーラルフレイル」とは、噛みにくい、むせる、食べこぼすといったお口の小さな衰えが積み重なった状態を指します。これは単に歯の問題ではありません。放置すれば人との交流を控えるようになり、社会的孤立を招くばかりか、全身がフレイル(虚弱)状態へと進行し、将来的な介護や死亡リスクにつながるというデータも出ているのです。

玉塚:高齢化が進み、社会保障費が増大する中、その対策の出発点である「口の健康」はこれまであまり注目されてきませんでした。これはなぜだと思われますか。

田中:多くの方が「まだ食べられているので困っていない」と感じているからだと思います。オーラルフレイルは2013年に提唱された日本発の概念ですが、まずは「放置すると危険だ」と自分事として捉えてもらう啓発が不可欠です。ただ、知るだけでは行動は変わりません。日常の中で予防できる仕組みをつくり、症状が深刻な方を歯科医院へつなぐ…といった「地域モデル」をパッケージ化することが大切だと考えています。

プロフィール画像2

玉塚 元一氏

株式会社ロッテホールディングス 代表取締役社長 CEO

1985年 慶應義塾大学卒業後、旭硝子(現AGC)入社。2002年 ファーストリテイリング代表取締役社長兼COO。2014年 ローソン代表取締役社長、2016年 同会長CEOを歴任。2021年 6月よりロッテホールディングス代表取締役社長CEO。

産学連携により、ロッテが地域の歯科医療をバックアップ

玉塚:気づき、そしてアクションですね。食事の時の噛み方や噛むトレーニングの重要性は私たちも感じており、ガムを使用した口腔健康プログラムの実証実験を各地で展開しています。そうした活動を通じて得たデータを分析した結果、オーラルフレイルを予防・改善することで将来的な介護費を約1.2兆円抑制できる可能性があることが分かってきました。研究者のお立場から、ロッテに対しどのような期待をお持ちでしょうか。

田中:私は「口を甘やかさない」という言葉を大切にしていますが、その言葉の実行にロッテのガムが大きな力を発揮しています。実際に、研究において被験者の方にガムを噛んでいただくと、「自分はまだ噛めるんだ」と気づいたり、継続していただくことによって「噛めるようになった」という自信につながったりしています。子どもから高齢者まで年齢を問わず、「噛むこと」を意識するだけでデータ上の数値も改善するのです。「噛むこと」の重要性の認知拡大に向け、今後もさらに活動を強化していただきたいです。

玉塚:こうした取り組みにおいて歯科医院の役割は非常に大切ですが、日々の治療に追われ、それ以外にまで手が回らないのが実情だと聞きます。そこでロッテは、歯科医師の皆さまがオーラルフレイル対策に注力できるよう、バックオフィス業務のアウトソーシングサービスや、口腔内のリハビリをサポートするコンテンツおよびシステムを提供していこうとしています。経営の効率化からマーケティング、業務支援ツールの提供までをパッケージ化し、地域の歯科医療を支えたいのです。

田中:素晴らしいですね。2024年にオーラルフレイル関連3学会による合同ステートメントが出され、歯科医に頼らずとも5つの質問票に答えてもらうだけで、口腔機能の評価が可能になりました。病院の待合室やカフェでもチェックができるようになり、地域と歯科医をつなぐ体制が整いつつあります。そこにロッテのような産業側からの支援が加わることは、地域全体を支える大きな力になるはずです。

横長ビジュアル

研究成果を社会実装して、何歳になっても“健口”に

玉塚:ロッテは創業者・重光武雄の代から、事業に直結する研究だけでなく、裾野の広い基礎研究を応援してきました。現在では研究者の皆さまの知見をどう事業として社会実装していくか、そのリンケージ(連携)をさらに強化しています。

田中:私たち研究者は論文を書くのは得意ですが、社会実装は苦手な分野です。ロッテ財団の助成は多様な分野の研究者との横のつながりを生み、また「ロッテ重光学術賞」のように中長期で腰を据えて研究に没頭できる環境を提供してくださっています。短期的な成果を求められるプレッシャーから解放され、地域を変える本質的な研究に向き合えるのは、研究者にとって本当にありがたいことです。データが事業につながり、その事業が地域に還元されるポテンシャルを生み出す――この流れは研究者が企業と連携することで初めて実現できることです。

玉塚:田中先生が研究を通して実現したい社会の形とは、どのようなものでしょうか。

田中:どんなに年を重ねても、食べたいものをおいしく食べられ、毎日を楽しく過ごせる社会です。最近の研究では、オーラルフレイルが認知機能にも影響することが分かってきました。お口の健康は、からだの健康だけでなく人々のウェルビーイングを広く下支えするのです。

玉塚:ロッテは「Lifetime Value Creator」というグループビジョンを掲げています。オーラルフレイルの克服は、そのビジョンを実現するための中心的な挑戦の一つです。ぜひ先生方の知見と私たちのリソースを融合させ、医療費削減や健康寿命の延伸に全力で取り組んでいきましょう。

公益財団法人ロッテ財団

外国人留学生や研究者への支援を通じて、国際交流、友好親善、人材育成、国民生活文化の向上、及び学術研究の発展を目的とする財団。「食と健康」をテーマとする研究助成により若手研究者を支援しており、過去13年間で延べ約420人の研究者に総額約22億円の助成を行っている。

https://www.lottefoundation.jp/grant/